わき汗~原発性腋窩多汗症治療薬について エクロックゲルとラピフォートワイプ
【原発性腋窩多汗症(いわゆるわき汗)とは】
原発性腋窩多汗症というのは『明らかな原因となる病気がないにもかかわらず、左右のわきの下に、生活に支障が出るほど多くの汗をかいてしまう』という状態です。
多汗症は、全身の発汗が増加する全身性多汗症と、体の一部分の発汗が増加する局所多汗症に分けられます。
局所多汗症の中には結核や悪性腫瘍、甲状腺機能亢進症、内分泌疾患、神経疾患、薬剤性など、何らかの原因の見つかるものと、原因の明らかでないものがあります。
このため、多汗を訴えてこられた患者さんには治療中の病気や服用しているお薬も含めて詳しく問診を取らせていただき、多汗の原因となる明らかな原因がないか血液検査をさせていただくこともございます。
局所多汗症のうち特に原因が明らかでないものは原発性局所多汗症と定義されます。
【原発性局所多汗症の治療】
治療として従来から塩化アルミニウム、ボトックス注射、内服薬、交感神経遮断術などの手術療法などがありますが、いずれも副作用があったり痛みや患者さんの体への負担が大きいという欠点がありました。
2020年11月に世界に先駆けてエクロックゲルが発売されました(保険適用あり)
エクロックゲルの主成分、ソフプロニウム臭化物は汗腺のムスカリンM3受容体を介した抗コリン作用があり、外用部局所で発汗を抑制します。
エクロックゲルについてもっとお知りになりたい方は科研製薬が出しているワキアセナビをご覧ください。
https://wakiase-navi.jp/
このほか、2022年5月からラピフォートワイプが発売されました(保険適用あり。新薬のため1年間は1回の処方が14日分まで)
こちらも同様に感染のムスカリンM3受容体を介した抗コリン作用で発汗を抑える薬です。
1回使い切りのシート状の薬剤なので衛生的、かつ持ち運びがしやすい特徴があります。
平均発汗量が50%以上改善した患者さんは試用2週目で92.9%、その後も持続的に使用することで効果が期待できます。
下のサイトをクリックしていただくと説明の2枚目に使い方動画を見られるQRコードがついています。是非ご覧ください。
https://www.maruho.co.jp/medical/pdf/rapifort/5062701.pdf
これらはわきの下にしかお使いいただけないので、従来通り手のひらや足の裏には濃度のそれほど高くない塩化アルミニウム水溶液を処方しています。
また、全身性の多汗には内服のプロ・バンサインを処方しています。
【 副作用(1%以上)】
羞明、散瞳、霧視、排尿困難、口喝、接触皮膚炎など
これらのお薬は今のところわきの下だけにしかつかうことができません。顔についた場合に散瞳や羞明などの副作用が出ることがあり、わきに使った後にはしっかり手を洗っていただく必要があります。
全身性の副作用は少ないとはいえ、当院では妊娠中・授乳中・緑内障や前立腺肥大症の方には処方しておりません。
またエクロックゲルは12歳未満のお子様・ラピフォートワイプは9歳未満のお子様には処方できません。
どちらも医師の処方箋が必要な処方薬です。
【価格】
エクロックゲル 1本20g(14日分) 4874円 (3割負担の方で1462円)1回に複数本処方できます。
ラピフォートワイプ 1枚 262円 14日分で3668円 (3割負担の方で1100円)1回に14日枚までの処方です。
よくある質問
Q: 原発性腋窩多汗症とはどんな疾患ですか?
A: 原発性腋窩多汗症は、汗の量が多くなる原因となる病気や障害がないのにもかかわらず、腋窩から両側性に、温熱や精神的負荷の有無とは無関係に、日常生活に支障をきたす程の過剰な発汗を認める疾患です。
https://ecclock.jp/disease_product_movie/chapter2.html#video3_list